気ままに雑記草

体や心の動き、読んだ本、暮らしについて。

目の前の

10年ぶりくらいで歌舞伎をみた。

国立劇場、平家女護島俊寛

演目に馴染みがなかったけれど、菊之助さんを見られるのが楽しみで。

席は舞台の一番前、ど真ん中。

こんなに間近に見たことはない。

幕を引く音、出番を告げる声、おはやし、太鼓、全てがいきいきとしていて。

何より役者さんの表情が、こんなにも、その場を生きていて、

しっかりと型や拍子を追っているはずの泣き声や動作が生きていて、

歌舞伎を見る楽しみはこれなんだろうとはっと驚いた。

 

主役以外は、人間の内面がそがれて、形になってさっぱりしている。

菊之助さんの東屋はしっかり作り込まれた憎しみや悲しみを切れるような美しさで見せてくれる。

吉右衛門さんの俊寛はもちろん作り込まれているけれど、どこか遊びがあって、生っぽくて、役や振り付けのなかで起こってくる感情を味わっているなあ、内面が蠢いているなあと、目が釘付けになるとはこのことで、幕切れの瞬間まで表情から目が離せなかった。